日本に一時帰国して思うこと

ベトナム移住

先日、フランス人の夫と0歳の子供と一緒に日本に一時帰国しました。

一人での一時帰国とはまた違った目線で見えてきた、良かった点・しんどかった点に分けてまとめてみました。普段は海外に住んでいるからこそ見えてくる「日本の良さ」と「残念だと思うこと」。

あくまで個人的な視点ですが、「こんな風に感じている人は一度海外にでてみればいいんじゃないか」という思いを込めてまとめてみましたのでそういった方の参考になれば嬉しいです。

日本のいいなと思ったこと

医療費でヒヤヒヤすることがない

ベトナムなどの途上国にも高度な医療施設はたくさんあります。実際、私もベトナムで出産しましたが、現地の国際病院であれば小児科・産婦人科・麻酔科・ワクチンセンターなどが施設内に揃っており、日本の地方の病院より整っていると感じることもあります。

しかし、外国人として海外に住んでいると、日本のような「国民皆保険」制度はなく、自分たちで民間の医療保険に加入する必要があります。たとえば我が家では、家族3人で年間約60万円の掛け捨て医療保険に加入していますが、それでもすべてをカバーしてくれるわけではありません。

持病や歯科・眼科は対象外だったり、保険会社に事前確認が必要だったり、場合によっては先に高額なデポジットを求められるケースもあります。

一方で、日本では国民保険に入っていれば、発症時期や加入時期に関係なく保険が適用され、自己負担額が一定額を超えれば高額医療制度で還付されます。こうした仕組みがあることの安心感は本当にありがたいと感じました。

重犯罪が少ない。子どもが一人で通学できるってすごい

日本では、殺人・誘拐・組織犯罪などの重犯罪が少ないのは本当に素晴らしいなと感じます。例えば、子どもが一人で登下校できる環境がある国は先進国の中でも2本くらいじゃないでしょうか?また、無人レジが成立するのも日本ならではでしょう。自転車を外に置いていても盗まれない国も実はとてもめずらしかったりします。

私がカナダに住んでいた時のことですが、自転車に2つ鍵をかけてもお店から出るとサドルとペダルだけ盗まれたことがあります。銃社会でもない日本では、夜に電車に乗ったり、暗い道を歩いたりしても不安を感じにくいというのも素晴らしいと思います。フランス人の夫も、夜地下鉄に乗った時に日本の治安の良さに驚いていました。

周囲にびっくりするような迷惑をかける人が少ない

電車の中でスピーカー大音量の通話、街中でのポイ捨て、大音量の音楽、騒音、教室の中でも平気で聞こえる受信音…。海外ではよく見かけるこれらの光景、日本ではほとんど見ません。日本人は、周囲の目を気にして行動している人が多く、公共の場でのマナーが守られています。

ベトナムでは、カフェでイヤホンをせずに会議をしている人がいたり、レストランで走り回る子どもがいても注意する人がいなかったり、飛行機の中でビデオ通話している人もいます。些細なことではありますが、日本ではそうしたびっくりするような人が少ないのは(マナーが良いのは)、精神的にもかなり楽です。

公共交通機関が時間通りにくる

多くの国では、公共交通機関が時間通りに来ないのが当たり前だったりします。何なら時刻表が存在しない国もありますし、バスなんかに関しては家族経営で何の通知もなく休業しているケースもあります(通勤なんかに使っていると本当に困る)。

日本のように1分単位で運行管理され、路線同士の接続も計算されているのは、もはや芸術レベル。公共交通に関しては、日本の信頼性は世界トップクラスだと思います。

交通事故が少ない

交通ルールがしっかり守られ、歩行者優先が徹底されている日本では、道を歩いていても安心感があります。

海外では、無理なUターンで道全体を塞ぎ交通渋滞を招く人や、歩行者を無視して猛スピードで走る大型車を見かけることも多く、「いつトラブルに巻き込まれてもおかしくない」と感じる場面があります。飲酒運転も厳格に規制されている日本では、一時帰国のたびに外を安心して歩けることが一つの贅沢だなと感じたりします。

当たり前だけど、言葉が通じる安心感

海外で生活していると、ちょっとした情報収集や買い物、行政手続きなど、すべてが言語の壁と隣り合わせです。現地語をある程度マスターしていても、疲れているときなどは全然頭に入ってこないこともあります。

そんなとき、日本に帰国して母国語が自然に耳に入ってくる環境にいると、「やっぱり楽だな〜」としみじみ思いました。

日常生活でだまされているかも・・・という不安感が少ない

日本は企業のコンプライアンスがしっかりしていて、サービスや商品を購入する際に「騙されているかも?」という疑いを持つことが少ないです。

私が住んでいるベトナムでは、日本のように消費者保護法が整備されていないので、何か大きな契約書を取り交わす時や家を借りる時はすべて自分たちで入念に契約書を確認し、必要なら修正を交渉します。行政や警察職員に賄賂を求められるのは日常的で、銀行の職員が個人情報を転売していたり…と日本では考えられない状況に直面する事があります。日本のように安心できる社会は本当に貴重です。

日本で住むのはしんどいなと思ったこと

移動が大変、お金がかかる

ベトナムでは、配車アプリ「Grab」が発達しており、移動はすべてドアtoドアで完結します。時間もかからず、料金も安く、子連れでも安心して移動できます。

しかし、日本では電車のラッシュや階段、終電の時間を気にしたりと、移動にストレスが多く、子どもを連れての外出はかなり大変です。通勤などが加われば、平日夜に家族でわざわざ電車に乗って外食しようとはなかなか思えないかもしれません。車があっても誰かが運転しないといけないことや駐車場のことを考えると家族で平日お出かけはハードルが高すぎると感じました。

一時帰国をして一番感じたのは、移動に時間やお金がかかると出不精になるということ。ベトナムに住んでいると、夫婦、親子の仲が良い家庭が多いなと感じることが多く、平日の夜でも日常的に親子連れで遊びに出てる家庭が多かったりします。それは、純粋に一緒にお出かけしたり時間を過ごすための移動のハードルが低いんだなと感じました。

すべてが高齢者を中心に設計されている印象が強い

テレビの番組、駅の支払い方法、役所の手続き、政策など、さまざまなサービスが高齢者に寄せて設計されていると感じました。例えばテレビをつけても「どこが技術先進国?!」と目をってしまう様な80年代、90年代の様なセッティングで正直目を疑いました

例えば、駅の改札では海外では当たり前のApple Payやクレジットカードが使えなかったり、役所の手続きはオンラインかが進んだとは言えまだまだ郵送や窓口対応が中心で、働き世代にとっては不便に感じる場面が多いんだろうなと思いました。

先日免許更新をしましたが、わざわざ会場に行く必要があり(しかも辺鄙な場所)、特にテストがあるわけではなくビデオを見るだけの研修で(会場では居眠りしている人もいる状況)、オンライン化できるはずのものが未対応なのも残念でした。

日本の技術力と創作力があれば、実はもっと最先端の技術を駆使したサービスを導入し、オンライン化できるものの、あえてそうならないのはやはり人口の大部分が高齢者だからなのかなという結論にいたりました。高齢者にとっては住みやすい社会になりつつあるのかもしれませんが、働く世代・子育て世代には住みにくそうだなと感じました。

その点、東南アジアは20代、30代を中心に社会が設計されているので携帯の使い方さえ分かっていれば、どこかの窓口に平日出向いたりすることは本当に特別なケース以外はないので、働く世代・子育て世代にとっては海外の方が生活しすいなと感じる場面が多かった印象です。

人手不足&コールセンターに電話がつながらない

先日クレジットカードに不正利用のトラブルがありました。カード会社のコールセンターに電話をしてもオペレーターさんに繋がるまで50分以上待つことに。50分待ってようやく繋がったと思いきや、担当者からの折り返しということに。しかし、折り返しの電話に関する案内が「1週間以内で日時は指定不可。その電話を取れなかった場合は、またコールセンターに電話してほしい(また50分待ちで同じやりとりを繰り返すのか・・・?)。メールなどのやりとりは不可。」と言われました。ただ単にクレカを止めるだけで1週間以上かかり、身をもって人手不足を感じる経験となりました。

若い働き手に溢れている東南アジアでは、同じトラブルがあればすぐに電話やメッセージで対応してくれ、再発行も2〜3日で完了しました。人手不足が原因とはいえ、日本の対応の遅さにはストレスを感じました。

買い物が楽

東南アジアでは、配送業者の人手不足といった問題がなく、スーパーのオンラインショッピングを利用すれば、どんなに時間がかかっても発注後1時間以内に自宅に配送してくれます。日用品や洋服なども、市内にある店舗からであれば、AmazonのようなEコマースサイトを通じて翌日には届きます。

レストランのデリバリーサービスも充実していて、アプリを使えばコーヒー1杯から即時配送が可能。配送料も無料だったり、かかっても100〜300円程度。お弁当を忘れた日のランチ、雨の日のご飯、夜21時を過ぎて小腹が空いた時などにも、家計を圧迫せずに気軽にオーダーできます。

一方、日本のウーバーイーツは手数料が高く、一般家庭が常用的に使うにはハードルが高い印象でした。また、日本では買い物も計画的に発注しなければならず、「あ!おむつが切れそう」というようなときでも翌日配送に対応してくれる店舗は限定されており、急ぎの場合は(日本ではあたりまえかもしれませんが・・・)雨が降っていても自分で買いに行く必要があるのが不便に感じたりしました。

家庭のどちらかに時間的な余裕があれば不便に思わないのかもしれませんが、そうでない場合は日々の買い物の管理が大きな負担になる家庭も多いんじゃないかなと。また、実家の母が高齢になり始めた今、バイクや車が使えない家庭では、重たい荷物(例えばビールケース買)をスーパーで買い込んで、普段の食材の買い物と一緒に一人で持ち帰るのは現実的ではないと感じました。

物価上昇と給与上昇の割合が変。不安を感じてる人が多すぎる

日本では、高齢者向けの補助金や支援金だけではなく、子育て世代にも補助金が出ていると聞きました。例えば、子ども1人あたり月1万5千円(3歳まで)の補助金が出るそうですが、「1万5千円って毎月おむつと粉ミルクを買ったら終わりじゃない・・・」と。そんな毎月デフォルトで消えていく額を補助金でばらまかれたって家計の不安が解消されるわけではないと感じました。

さらに、一時帰国して感じるのが、急激な物価上昇です。物価の上昇自体は必ずしも悪いことではありませんが、それに見合う形で給与が上がっているかというと、疑問が残るなと。

大企業は行政の圧力もあり改善しているようですが、日本の95%を支える中堅・中小企業では給与や待遇がそう簡単に改善されないのが現状。そこへ加え、共働きはもちろん、副業まで推奨される社会になると各家庭のお金に対する不安はもちろん、余裕のある時間のなさは私には耐えれないなと感じました。

東南アジアでもインフレはもちろんありますが、それ以上のスピードで給与が上がるのが一般的。ホワイトカラーの仕事であれば年5〜20%の昇給は珍しくありません。その為、インフレ率が3〜4%/年であっても、給与がそれ以上に上がれば生活はむしろ良くなっていくと感じる場面が多く、値上がりがあまり気になりません。

将来への不安よりも「明日は今日よりもっと良くなる」と期待と希望を持って生活している若者が多いです。対して日本では、日々の生活・将来の蓄え・老後への不安を常に感じている人が多く、それがビジネスやキャリヤ面での挑戦、家庭を持つことを阻む原因にもなっているようにも感じます。

不安が蔓延している社会では、政治への関心も薄れ、「選挙に行っても意味がない」と感じる若者も増えてしまいます。実際、近年の日本の選挙を見ていても、新しい挑戦を掲げる候補者よりも、現状を守る保守的な人が選ばれやすい傾向にある様に感じます。政治家そのものもの、課題解決より「大きな問題を起こさない様にその場しのぎ」の対応に終始している印象を受けます。

私自身も、特に何の心配もなく普段生活しているのに、1〜2週間日本に滞在するたびに、なぜか将来に対する漠然とした不安を感じてしまいがちです。

無料のWi-Fiが使える場所が少ない

今やパソコン1台あればどこでも仕事ができる時代ですが、日本ではカフェやレストランで無料Wi-Fiが提供されている場所が非常に少ないと感じます。長居を避けてほしいという店側の意図があるのかもしれませんが、それにしても、家の外で気軽にネットに接続できる場所が少なすぎることを帰国するたびに不便に感じてしまいます。

東南アジアでは、カフェでもレストランでもバスの中でも、施設が無料Wi-Fiを提供しているのが一般的です。また、日本の携帯キャリアの通信費は高額であるにも関わらず、通信の質が安定していない点も問題です。日本の携帯の通信料金はベトナムの10倍くらいするのにも関わらず接続のクオリティはベトナムの方が断然良いなと感じる場所が多いです(ポケットWi-Fiも同様)。フリーランスや完全リモートで働く人にとっては住みにくいなと感じました。

ネットでの情報が少ない

地方への旅行を計画しようとしても、インターネット上に十分な情報がないことに驚かされます。たとえば、民宿を探しても出てくるのは電話番号だけ。宿泊料金や施設の基本情報、写真などが見つからないことも多く、「電話で確認してください」というスタイルが今も続いています。

しかし、忙しい現代人にとって、わざわざ電話をかけるのは大きなハードルです。昔ながらの良い宿がたくさんあるのに、それを紹介する手段が限られているのは非常にもったいないと・・・。

食事処に関しても同様で、個人経営の美味しいお店がたくさんあるにもかかわらず、情報をネットで見つけるのが意外と難しい。大手チェーンや宣伝に力を入れている企業の情報はすぐに出てきますが、それもぐるなびなど日本独自のプラットフォームがメイン。ローカルな名店の情報は埋もれがちです。

海外では、たとえばBooking.comやAgodaなどを使えば、小さな地方の個人経営の宿でも簡単に情報を検索・予約できます。レストランも、Googleマップで検索すればレビュー・写真・営業時間など充実しているケースが多く個人経営の美味しいお店の情報も日本に比べすぐに見つかったりします。

日本では、特に地方に行けば行くほど、インターネット上での情報収集が難しくなる印象を受けます。地方こそ、まだまだ面白い場所や体験がたくさんあるのに、それを発信できていないのは非常にもったいないと感じました。

周囲に気を遣いすぎてしまう文化

日本の公共の場では、周囲に配慮した行動が求められる場面が多く(マナーが良いという意味ではプラスに働きますが)、時には必要以上に気を遣ってしまうことがあります。

例えば、電車の中で赤ちゃんが少し泣いただけで周囲から白い目で見られたり、ちょっとしたことでも「すみません」と何度も謝らなければならなかったり。子連れで外出する際にも、「うるさくしていないか」「迷惑をかけていないか」と常に気にしてしまいます。

海外では、多少子どもが騒いでも周囲は寛容で、親もそれほど気にしていないことが多いため、日本にいると精神的に疲れてしまうこともあります。

また40代・50代の女性がノースリーブだろうがビキニを来ているからといって変な注目を集めることはありません。

「空気を読む」文化は良い面もありますが、それが過剰になると、個人の自由や安心感を損なう原因にもなりかねないと感じました。


以上、一時帰国で感じたことをまとめてみました。

どちらが良い・悪いというより、それぞれの国に特徴があるということ。日本の素晴らしい点に気づくと同時に、改善の余地がある部分も見えてくる、そんな気づきの多い帰国でした。

これから海外にでたいと思っている人は

これから海外にでたいと思っている人は、安心・安全を得るために諦めれるもの(反対もありきで利便性、自由度、挑戦できる環境、未来への希望や活力を得るために諦めれる安心・安全)を比べた時に、安心・安全は少し後回しでもいいか・・・と思えるのであれば是非一度海外に出てみるとよいかなと思います。

とはいえ、個人的には日本という国は日本のパスポートを持っている限りは、いつでも国民を笑顔で受け入れてくれます。

なので、あまり深く考えず一度出てみて、自分に合わなければ戻ってくるというのもありだと思います。また海外ならではの不安、不便さを体感したからこそ、初めて気づく日本のすばらさを新たな目で発見するのもありと思います。

その中に眠っているビジネスチャンスに気づき新たな目線で物事を捉え挑戦できる若者がもっと増え、社内の中の疑問や不便さよくしていきたい!(日本という国をもっとよくしていきたい!)と前向きに考える人口が増えればいいなと思ってみたり。

日本に一時帰国して思うことは、安心・安全という面ではどの国より優れているということ。

だけど、利便性、自由度、挑戦できる環境、未来への希望や活力と言った意味では疑問を持ってしまうことが多いと感じました。

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