なぜ海外就職を検討されている方に向けて大学卒業に関する記事を書くことにしたかというと、私自身、初めて海外に脱出した20代の時、大学を卒業していなかったことが理由で就職先を探すのにとても苦労した経験があるからです。
そこで今回の記事では、海外就職するなら大学卒業をお勧めする理由をお話ししたいと思います。
また、ただ単に大卒がいいと言われても「手遅れだよ・・・」という方のために、大卒以外でも有望な資格や専門をご紹介したいと思います。
そして最後に社会人になってからでも挑戦できる学位取得方法もシェアします。
これから海外就職を検討されている方の参考になれば幸いです。
なぜ大学を卒業しておくことが重要なのか
そもそも海外に滞在するのに必要な資格
そもそも海外に長期的に滞在するには「在留資格」と呼ばれるものが必要になります。在留資格とは、別の言葉であらわすと、その国に滞在する目的(就労、留学、現地にいる家族との滞在など)や活動内容に応じて取得するビザのこと。
海外旅行の経験があまりない…という方にとっては聞きなれないキーワードかもしれませんが、実はビザの協定がない国に行く場合、通常は海外旅行前に訪問先の入国管理局や大使館・領事館でビザの申請をする必要があります。
しかし、日本はさまざまな国と協定を結んでおり、観光目的であれば15日間、30日間、90日間、半年間といった期間、パスポートを持っていればビザを申請しなくても良い国が多くありますが、観光以外の目的での渡航の場合、基本的にはその目的に合ったビザが必要です。
ビザの種類は、観光なら観光ビザ、現地で就職をするなら就労ビザ、学校に通うなら学生ビザ、会社を経営するならそれに応じたビジネスビザなど、種類や滞在できる期間、申請の条件や難易度はその国によってバラバラです。他にも年齢制限はありますが、1年程度現地で観光も仕事ができるワーキングホリデービザを発行している国もあります。
海外就職とビザ
一般的に長期的で海外に滞在(移住)したい場合、現地に家族がいる、現地の方と結婚している、リタイアメントビザを持っている、現地で初めから会社をつくるぞ!という方など、ちょっと特別な条件の人以外は現地で仕事を探し就職するというのが一般的だと言えるでしょう。
現地で仕事をするためには何が必要かというと、それは就労ビザです。
では就労ビザがどのように取得できるかというと、
- 外国人を採用したい会社を見つける(求人に応募)
- 採用してもらう(面接)
- 会社が現地政府に外国人を雇用することの申請
- 会社がスポンサーになって政府に就労ビザを申請する
- ビザ取得&渡航&勤務開始
という流れが一般的です。
ここで知っておきたいのが、国内での転職と違い③のところで話が流れてしまうというケースもあるということです。というのは、どんなに現地の企業がその人を採用したいと思っていても、政府からビザの認可が下りなければ正式に雇用(渡航)できません。
その理由は、現地の会社が(現地の日系の会社も同じ)、現地の方を雇用せずに、わざわざ海外の働き手を誘致するということは、それなりの意味や価値があるということを国に対し証明する必要があります。その為、就労ビザの取得には現地の方の雇用の維持・確保を目的に、様々な条件を設けている国が多いんです。一番わかりやすい日本人がビザの認可を受けやすい職業が日本語教師や寿司シェフ。日本人でなければ務まりにくい仕事の場合、認可が下りやすい傾向にあります。
そして日本人特有の職業や専門職ではない場合、特にホワイトカラー職の代表的な条件が大学卒業資格となります。
もちろん、後でお話しする専門性の高い職業の場合、それが当てはまらないケースもあるのですが、多くの職業・国では大卒の候補者でなければ会社がスポンサーになってビザを申請できない場合が多いんです。
これはワーキングホリデーなどの1年間海外で就労ができるビザで来た人が、滞在中にアルバイトをしていた会社で就職したいという場合も同じ。1年同じ会社でまじめに働いて、評価も良く、人間関係も構築できていたとしても、1年後、ワーホリのビザが切れる段階でその会社で就職できるチャンスがあったとしても、ビザの要件を満たしていなければ雇用・延長にはつながりにくいということになります。
海外にインターンシップで来る学生さんがハマる落とし穴
近年では優秀な学生さんが大学在籍期間中に休学申請を行い、半年や1年といった少し長めのスパンで海外の企業にインターンシップをしにやってくる姿を目にします。そういった学生さんから、インターンシップ先企業や滞在国との波長が合い、大学を中退してそのまま現地就職したいという相談をいただくことがあります。
しかし、大学中退し、社員としての勤務経験が皆無の学生さんを海外で現地採用するのは安易なことではありません。例えば、私が住んでいるベトナムでは外国人採用の要件として、①3年以上の職務経験(職務経験が現地での職務内容と一致していることが原則)、②大学卒業の2つが基本的な条件となります。採用企業側の意向が強くあの手・この手を使ってでも新卒の方を採用し、ビザ取得サポートするケースも中にはあるのですが、それでも将来的に現地で転職をしたいと考えた場合、せっかく現地での勤務経験があっても、次の会社が見つかりにくいという壁にぶち当たることになります。
そのため、在学中の学生さんから海外就職について相談を受けた場合、どんなに優秀な学生さんでどんなに素敵な就職チャンスであっても「大卒資格を取れるチャンスがあるなら海外就職は取ってからにした方が良いよ」とアドバイスするようにしています。
海外は日本以上に学歴社会&専門性が問われる
ビザ以外でも知っておきたいことがもう1つあります。それはオフィスワーク・ホワイトカラーの仕事の場合、海外では日本以上に学歴社会だということです。
例えばヨーロッパ諸国だと、そもそも教育システムが異なるということもあり、大学を卒業しているのはあたりまえ。さらに、海外で働いている人たちを考察すると大学院(マスター)まで卒業している人の割合が非常に多いです。反対に欧米の場合は、大学卒業後にビジネススクールでMBAを取得したという人も少なくありません。また大学時代の専攻学科をヒアリングすると、ほとんどの人が卒業した学科と職業の専門性が一致しているケースが多いんです。
これは日本の新卒就職の仕組みが他の国とは異なることが理由。というのは、日本の新卒採用は、卒業間近い学生を一括で採用する仕組みで、職種を指定しての就職ではなく、会社単位でのポテンシャル重視の採用という点が特徴です。
一方、海外では、一括新卒採用という概念がなく、通年採用やインターンシップを経ての採用が一般的です。そして、即戦力としての実力が重視され、スキルや実績がより強く評価されるため、新卒であっても、大学の専攻やインターンシップでの経験職種の中身を見て判断される形になります。
つまり、日本の様に「とりあえず会社という大きな箱に採用されてから配属先の決定」という概念がなく、経理部の仕事に応募するなら大学での会計専攻や経理資格、法務部に就職するのなら法律関係の大学を出ていることが前提となります。そして候補者は会社名だけで応募するのではなく、具体的なポジションの記載された個別求人の中で自分のバックグラウンドにあった求人に応募する形になります。
言い換えれば、海外での就職の場合、大学を卒業していることは当たり前。さらにその専攻や専門性が応募するポジションと一致しているということが大条件になります。また韓国のように大学の進学率が非常に高く、就活の競争率が異様に高い国の場合、専攻だけではなく、大学名やインターン先の企業名の知名度が非常に高くなければそもそも書類選考すら通らないという企業もあるようです。
このように、海外移住の中でも海外就職をベースに移住を検討している方の場合、ビザ取得と現地就活の難易度という観点から大学は卒業しておいた方が、就職や現地での転職などスムーズに進む傾向にあると言えます。
海外x専門職ならこれで勝負
ここまでの話を読むと「大学を卒業していないなら海外就職は無理なのか…」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
でも、心配は無用です。
実は大卒以外でも、現地で就労ビザが取得しやすい職業や資格もあります。特に以下のような専門職は、ビザ取得の条件が緩和されているケースが多く見られます。
- 日本文化に特化した職業(寿司職人、日本語教師、生花講師)
- ITエンジニア(プログラマー、システムエンジニアなど)
- 士業(会計士、弁護士、医師など)
- 技能職(工場管理、建築・建設関連など)
- 美容師、ネイリスト、整体師(現地に日本人向けのサロンを開業)
これらの職業は、現地での人材不足を背景に外国人に門戸を開いている国が多く、職歴や技能証明書(資格)があれば、大学卒業が必須でないケースもあります。
日本人を強みに生かした日本語教師・寿司シェフ
現地企業が外国人を採用しやすい1番の職種の一つが日本語教師や寿司シェフなど、日本ならではの文化に関連した仕事です。これはシンプルに、どちらの職業も日本独自の技術、知識、経験、文化理解が必要で「日本人にしかできない職業」と認識されているからです。
つまり、現地の方の雇用を脅かすことなく、外国人労働者として受け入れられやすい傾向にあるという事です。しかし海外就職先として求人が多い分、国によっては労働時間や給与待遇に疑問が残る求人も多く存在する為、応募の前に現地でどういった待遇が準備されていて、どんな水準の生活をしたいのかはしっかりと見定めておく事をお勧めします。
世界共通ITエンジニアはどこに行っても強い
国や国籍は関係なく、ITエンジニアは世界共通で需要が高い傾向にあります。日本語しか話せない人であっても、日系企業の現地支社での求人や、少し英語や現地語が話せるのであれば、現地企業での就職も狙っていける職業です。
また、リモートでの採用がまだまだ多いITエンジニアの場合、滞在国と就職企業の国が異なるというハイブリッドな働き方ができることが魅力です。
また少し一般的な海外移住とは異なりますが、近年リモートワークが一般化したこともあり、特にITエンジニアさんの場合、日本の会社に所属しながら、ノマドビザや観光ビザを活用し海外の様々な都市を転々としながら海外生活を満喫されている人も増えているようです。
士業の需要はどこに行っても高く待遇も良い
公認会計士・弁護士といった国家資格は海外でも需要が高く待遇もよい傾向にあります。
例えば会計士の場合、現地コンサル会社、監査法人、また企業内の財務部や経営戦略といった求人を多く見かけます。限定採用が難しい傾向にあり、資格の付加価値が高いため、たとえ現地の言語が話せなくても通訳やアシスタントをつけることを前提に採用という求人も少なくありません。
もちろん日本でも需要の高い分野ではありますが、個人的な見解としては、海外で士業を生かした就職をする場合、若手の方でも比較的マネージメント職や経営に近いポジションで勤務できるチャンスに溢れている気がします。というのは、日本人×士業の数がそもそも少なく、日系企業の現地支社の場合、法務や財務の会社の中核を担う職務にはやはり日本人を採用したいと考える企業がまだまだ多いようです。そのため、資格は持っているが日本の年功序列社会で伸び悩んでいる人にとっては、いろんなことに挑戦する大きなチャンスとかもしれません。
途上国では建築・建設系は意外と狙い目
発展途上国では建築ラッシュが続いています。橋、鉄道、道路といったインフラ設備から商業用ビル、大型のコンドミニアム、新たな工場の建設が活発に行われています。そのため、日本の大手ゼネコンもODAなどのプロジェクトで現地に支店をおいている企業も多く、特に途上国では日本人の建築施工管理技士や一級建築士の需要が高かったりします。
生産管理ができる工場長は年齢関係なくニーズあり
日系の生産工場が多く進出している国では現地の工場を管理できる人材を積極的に募集しています。特に、日系工場の多いタイ・ベトナムをはじめとする東南アジアや、車の生産が活発に行われているメキシコなどでは、たとえ日本ではすでに定年退職したシニア層であっても、生産現場での管理経験や技術的な知見があれば、採用を行っていたりします。
世界中どこでも活躍する独立系美容師・ネイリスト・整体師
就職とは少し異なりますが、もう一つ海外で活躍している日本人でよく見かけるのが、美容師・整体師といった職業の方々です。現地の施設に就職している人もいれば、マンションなんかの一室で独立し開業している人も多く見受けられます。
この様に大学を卒業していなくても海外で活躍している人たちは沢山存在します。しかし、「手に職がある」「はっきりとした専門性がある」分野の傾向があると言えます。反対に、現地語がマスターできていないと難しいマーケティング職や事務職などは日本人を雇用する必要がないこともあり、比較的就職が難しい傾向にあります。
社会人になってから働きながら大卒資格という選択
今まで国内で働いてきた方の中には、会社の業務をオールマイティーに対応してきたからこそ「これ!」といった専門性に乏しいキャリアになっている人や、学歴にコンプレックスをお持ちの方もいらっしゃるかと思います。海外就職となるとそれらがフィルターとなってしまい就活に苦戦する場面も。そこで、社会人になってからでも挑戦できる学位をご紹介したいと思います。
では今から大学に通って卒業資格を取るしかないのか?と思うかもしれませんが、実はそうではありません。現代では、オンラインで学びながら、もしくは今の生活や仕事をそのままにしたまま、働きながら学位が取得できる選択肢が増えてきています。
例えば、日本でも放送大学、慶應義塾大学の通信課程などが有名ですが、今の仕事を辞めずに、空いた時間に勉強をして学位を取得することが可能です。
また、海外の大学であっても100%オンラインで学位取得ができる大学が急増しており、中には学費が年間10万円~といった非常に安価な学校もあります。授業が英語であっても、意外とレポート提出やテストが中心で、聞き取れなかったら繰り返し再生できる等の工夫があるため、真面目に取り組めば英語があまり得意でない人でも単位取得が可能な大学も存在します。
日本の通信大学
日本で知名度の高い大学(早稲田や慶應)も、実は通信課程を提供しています。通信大学の場合、一人でコツコツと勉強をしなければならないという難易度はありますが、社会人をしながらでも勉強できることに加え、一般課程に比べはるかに安く卒業できることが特徴です。
例えば慶應大学の通信課程を最短で卒業した場合、4年間の合計で100万円前後。(https://www.tsushin.keio.ac.jp/admissions/simulation.html)。
中央大学においては50万円前後(https://www.tsukyo.chuo-u.ac.jp/guide/cost/regular/)で卒業可能です。もちろん、働きながら勉強する時間をしっかりと確保する意思と行動力は必要ですが、自分のペースで進められるので、挑戦しても良いかもしれません。
オンラインMBA
また、大学はすでに卒業しているという人にも少しレベルアップしたいという方におすすめなのが、修士(マスター)やMBAの取得。国内ではグロービス経営大学院などが積極的にコースを提供していて、通信プログラムや週末だけ通う通学スタイルでの学習が可能なようです(https://mba.globis.ac.jp/)。
私自身は、アメリカの University of the People という通信大学でMBAを取得しました。大学自体には知名度はないのですが、①3000ドル以下の学費でMBAが取得できること、②米国の大学なので今後言語能力を証明するためにTOEICなどのテスト結果を提示する必要がないこと、③オンラインで自分のペースでできることから、生涯教育の一環として取得することにしました。
海外には外国人も無料の大学がある
また、海外就職ではなく長期留学で海外滞在を検討されているのであれば、海外で大学に通ってみるというのもありかもしれません。ノルウェー、アイスランド、ドイツでは外国人学生でも学費が無料(あるいはそれに近い)で通える学校が存在します(主に現地公立校)。もちろん、言語は英語や現地語になるため、言葉の習得は必須となることに加え、現地での生活費は発生しますが、長期的に見ると「日本人 × 海外大学卒業 × 言語力あり × 海外生活経験あり」といった、他にはないバックグラウンドが将来的なキャリアとしてプラスになる可能性が十分にあると言えます。
また、「この国が好きだ!」という特定の地域がすでにあるのであれば、その国の言語を習得し、その国の学位を取得しておくことは現地就職において非常に有力です。
最後に
学位の違いをすぐに体感できる
国内ではまだ利用者が少ない様ですが、海外就職で一番使われているプラットフォームがLinkedIn。簡単に言えば、Facebookのキャリア、ビジネス向けプラットフォームで、利用者はそれぞれの学位、キャリア詳細をプロフィールに公開しています。
営業ツールとしてビジネスで利用する会社も増えてきていますが、最も活用される場面が人の採用です。LinkedIn上で求人を探したり、企業に応募したりも可能ですが、専門性が明確なプロフィールであれば、企業側や採用エージェントからスカウトメッセージが届きます。
私自身は社会人になってから大学を卒業し、MBAを取得したので、1度作成したプロフィールを何度か更新しているのですが、学位取得を更新するたびにスカウトの数が明確に増加しました。
近年、副業が一般化したこともあり、海外就職でなくても、円安の傾向を受け、オンラインの仕事でドルを稼ぐ人も増えてきています。学位取得はそういった今までとは異なる海外の新たなチャンスにもつながると言えます。
何かに挑戦したいと思う人が海外には合っているのかもしれない
何かに挑戦したいという思いを持って行動している人の方が海外生活に合っているんじゃないかな・・・と長年海外に住んでいると感じます。やはり国内に住んできた時と比べ、言葉も文化も習慣も違う環境の中で生活していくには、それなりのマインドセットが必要なのかなと。
そういった意味では、専門性を磨くのはめんどくさい、行動する前から「今から学位や資格を取るなんて絶対無理」と諦めてしまうマインドセットでは、海外就職はそもそも厳しいかもしれません。
これからの時代、選択肢を広げておいて損はない
もちろん、海外での就職・移住が人生のすべてではありませんが、何が起こるか分からない今の時代だからこそ、「もしも自分が海外に出たいとなった時に、選択肢を持っている状態にしておく」「外貨を稼げるようにしておく」という意味でも学位の取得を検討しておくことは有効です。
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